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Basement


世界的に蔓延している殺人ウイルスが、ついに私の住む街へと近づいてきた。
ここ数日TVのニュースや新聞を賑わせてる殺人ウイルスは黄砂に乗って飛散しているらしく、各国での死亡者は増えるばかりだ。

殺人ウイルスと言っても感染した者が死亡するワケではなく、感染者が人を殺してまわると言うものだ。
避難勧告を出す余裕もなく、政府が打ち出した対処法は「ただ自宅から出ない」というお粗末なものだった。
昨日は客でパンクしそうなスーパーへ何とか入り、数日分の食料やら消耗品やらを買い込み、そして自宅の補強作業に努めた。

不安がる妻と息子をなだめ、ラジオを取りに私が1人で地下室へ入った事が命運を分けた。

上の階から絶叫が轟き渡る。
その声はもはや妻と息子のそれではなかった。どこからか忍び込んできたウイルスに、一瞬の間で感染してしまったようだ。
恐ろしいまでの絶叫を歌いながら2人は地下室の入り口へと走ってきた。
赤黒い顔をした妻と息子は私を見付けるなり全ての勢いを増し、私は間一髪地下室のドアを施錠した。
鉄製のドアを壊さんばかりの力で叩き続ける妻と息子。
このドアが壊れれば、私はきっと殺されるだろう。

地下室には買い込んだ食糧が置いてある。数日は生きていける。ラジオはあるが電波が届かない。携帯電話は上に置いて来た。あるのは時計のみ。
私はまるっきり外の状況が分からなくなってしまった。


約7日後。
昼なのか夜なのかは分からないが、時刻は1時。
食糧は尽きた。全て地下に収納していなかった事が悔やまれる。
妻と息子はまだドアを叩き続けている。
私の体力もドアも限界が近づいてきた。

私の手には冷たく鈍く光る猟銃。私が昔趣味で使用していた散弾銃だ。
何度も自分の顎に銃口を当ててはみたが、時間を追う毎に冷静さを欠いていく一方で生への執着が強くなっていく。
自分の顎へ当てていた銃口は、今はドアの向こうにいる妻と息子へと矛先を変えた。
あんな姿で生きているよりも、私がこの手で始末した方が妻と息子もきっと幸せなはずだ。
私はそう自分を正当化した。

ドアの鍵を開けて私はすぐさまドアの横に隠れた。
勢い良く2人は部屋の中ほどまで走りこんできて、そして後ろを振り返り私を確認した。その赤黒い顔で。
私は躊躇うことなく妻を撃った。続けて息子も撃った。2人はもう起き上がってはこない。

こときれたであろう妻と息子の赤黒かった顔は、みるみる間に肌色に戻っていく。
妻と息子が死んだ事でウイルスも同時に死んだに違いない。
私は間違ってはいない。これで良かったのだ。

階段を上がり、私は1階のリビングで午後1時半だという事を確認した。リビングのテレビは点けっ放しになっていた。
あれからもウイルスのニュースで賑わっていたのだろう。アナウンサーが興奮しながら何やらを喚いている。

「引き続き殺人ウイルスの情報をお伝えいたします!このウイルスは感染すると非常に凶暴化する恐れがあり、近寄ると非常に危険であります!ですが、このウイルスは感染して7日目に自然に死滅するという事実が判明いたしました!非感染者はなるべく感染者からの接触を避け・・・」

妻と息子の顔色が戻ったのは、何も私が殺したからではないのだ。
7日目に勝手にウイルスが死滅しただけなのだ。

私は再び地下室へ戻り、まだ熱い銃口の矛先を私の顎へと導いた。

(エファ)

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Comment

エファさん,今晩は。
今回のお話もいいですね。こういった短いお話って昔
ラジオ・ドラマで放送されてたりしたのを時々楽しく
聴いたりしてました。録音しておけばよかったなァ。
そういえば今回のお話を読まさせていただいて映画
『ミスト』のラストの方をチョット思い出しました。

>snowmanさん

『ミスト』と似ていると言われたのはsnowmanさんで2人目ですよ〜。
元々バッドエンド的な物語が好きなので、私の好みド真ん中な夢でした。
とは言え、脚色はしてあります(;^ω^)
テレビのニュースを見たあたりで目が覚めたので、最後地下室に戻って銃を自分に向けるシーンは付け加えました。

ラジオって久しく聞いてないです。
夜から聞き出して、結局朝まで聞いていたってパターンが多かったような。
今でもラジオは面白いの流してるんでしょうかね?

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