アメリカン・クライム (2007)

久しぶりにアルバトロスからパワフルな作品が出てます。
それはこれ、『アメリカン・クライム』

主演は今や売れっ子のエレン・ペイジ
よくぞこんな脚本読んで出たもんだと思いましたが、『JUNO』で売れる前に撮ってたようです。

内容は実際に起きた陰惨な事件を基にしていて、裁判劇を進行させながら事件真相を回想させていく流れとなっています。

事件と言うのは、1965年インディアナ州で起きたある一家の児童虐待の事ですが、米国では有名な事件でジャック・ケッチャム『隣の家の少女』もこの事件をモチーフに描かれています。
事件そのものは日本での「女子高生コンクリート殺人」に並ぶほどの凶悪事件です。

もしこの事件をご存知ない方は、映画を先に見る事をお勧めします。
概要を知って映画に臨むと、次がどうなるのか予想できるだけに最後まで見るのが一層辛くなると思います。


両親がカーニバルであちこちを巡業する仕事だったため、シルヴィアと妹のジェニーはガートルード・バニシェフスキーと言うシングルマザーの女性に預けられる。ガートルード家には7人も子供がいるためとても女手1つでは養えず、2人を預かる事でシッター代を稼ごうと思い立ったのだった。 子供達はしばらく仲良く暮らしていたのだが、ガートルード家の長女・ポーラがついた嘘とシルヴィアの親が送ってくるはずのシッター代が少し遅れた事が重なり、ガートルードはシルヴィアに「お仕置き」を加え始める。


ところがこのお仕置きは常軌を逸脱していて、煙草を体に押し付けたり皮ベルトを振り下ろしたり。

ついにシルヴィアは地下へ監禁され、ガートルードだけではなく子供達も一緒になって虐待を繰り返すようになります。
子供達は絶対の存在である母親容認の虐待であるため、次第に罪の意識は薄れゆき遊びの感覚です。
そしてその遊びに楽しさを覚え、近所の友達を誘っての虐待にまでエスカレート。虐待と言うか暴行ですね。

エレン・ペイジ『JUNO』『ハードキャンディ』での活発でしたたかなイメージがあるのですが、この作品においては非常におとなしく、ヤラれるがままです。

と言うのも、シルヴィアには小児性麻痺を患った妹・ジェニーがいたため、そのジェニーに手を出さないで欲しいという愛情ゆえにガートルードの呪縛から逃げる機会を失った感じです。

ところがこのジェニー、自分に被害が及ぶのだけを恐れて姉が虐待されている様子を、だんだん普通の眼差しで安全な位置から見下ろしているだけなんですよね。

ご近所にもシルヴィアの悲鳴が聞こえているのですが、田舎独特の閉鎖感と言うか「巻き込まれちゃ敵わない」的なムードが、事件を深刻化させていると思います。

この鬼のようなガートルードを演じるのはキャサリン・キーナー
貧乏で安っぽい服を着ていても、そこはかとなく溢れ出る色気・・。
彼女は喘息を患っていて、キツそうなお薬をガブガブ飲んだりしています。
とにかくイライラするのも、この薬の副作用かもしれませんね。

金はない、長女は言う事聞かない、情夫からは殴られ金をせびられる。
自分の子供達には当たれない。そんな時、全てを黙って受け止めてくれるシルヴィアがターゲットになってしまったワケです。

実際のガートルードは正に「鬼ババァ」と言う形容が相応しいお顔をしていて、全く同情の余地を与えません。
それに対し、キャサリン・キーナーが演じるガートルードは「私も辛かったのよー。何となく同情できるっしょ?」と見えてしまい疑問を感じます。
裁判劇も加えて忠実に作品化しようとしているのなら、ガートルードを「完全なる悪」として表現してしまうのが1番ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

この作品は物議をかもし、どこも配給会社が決まらなかったそうです。
それで米国のTVで2時間ドラマとして流れたとな。
TVで流れるにはいささか刺激的な内容なのですが、さすがにそこはサッパリと撮っています。ガートルード家の子供達のほとんどを女の子に設定していると言うのも、オブラートに包んだ感じがします。
実際に起きた事件は、とても映像化できる内容ではありませんしね。鬼畜の所業としか思えません。

作品のラスト周辺は「えっ!?!?」となってしまうシーンがあるのですが、そこはさすがに映画的な表現で見る側によって捉え方が変わってきそうです。

このバニシェフスキーの事件は既にジャック・ケッチャム『隣の家の少女』として書籍化していると書きましたが、更にそれを映画化した『THE GIRL NEXT DOOR 』と言うのも2007年に出ています。日本にはまだ来ていませんけどね。
『THE GIRL NEXT DOOR 』ケッチャムの原作に非常に忠実で、ガートルード婦人は貧乏臭さは無く派手な女性として描かれていました。

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↓に実際の事件とラスト周辺について書いてます↓







実際に起きた内容こそホラーで、地下に監禁されたシルヴィアはガートルード家の子供や近所の子供達に代わる代わるレイプされてしまいます。
時に殴り続け、時に煙草の火を押し付け(150箇所に及んでいた)、食べ物の代わりに糞尿を食す事を強要。

16歳だったシルヴィアは、自らの尿にまみれたベッドで死亡しているのを発見され、一家は逮捕されました。亡くなったシルヴィアの腹部には、「i am a prostitute and proud of it」と言う文字が針で彫られていたらしいです。

しかしこのガートルード、刑務所内では「お母さん」と言うあだ名を付けられる程慕われるようになり、1985年に仮釈放を受けたとの事です。


作品のラスト周辺、シルヴィアはポーラの助けによって家から脱出する事に成功します。
両親の元に帰る事が叶ったシルヴィアですが、その後両親の車でガートルードの家に戻ってきます。
そこでシルヴィアが見たものは、自分が息絶えている姿でした。

これって???

私は、息絶える寸前に見たシルヴィアの妄想だったのかな?と捉えました。
逃げたい・両親の元に帰りたいと願うあまり妄想を見たものの、最後は現実に戻って死んでいったのでしょうか。
何とも救いようのない、悲惨な事件です。

(エファ)     

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Comment

シルヴィア・ライケンス事件

これは見ていて腹が立つというか辛くなる作品でしたねー。ラストはエンドロール後にシルヴィアの生没年数が出てきたのでそれからするとエファさんの捉え方であっていると思います。確かに「えっ?」と思いましたが印象深いラストでしたね。

「隣の家の少女」もレンタル開始されたので今作と比較して見てみようと思います。ケッチャムの原作は読んでませんが、「隣〜」ではガートルード(ルース)が今作より悪として扱われているようですね。さて、どちらが面白い(題材が題材なので面白いという表現は的確ではないですが)のでしょうか。

>sasuperia2redさん

ほんと、見てて辛い映画でした。
これが実際にあった事件だなんて信じられませんね。どんなホラー映画より恐ろしい事です。ラストにああいったフィクションを含ませる事で、より印象に残る最期になったような気がします。

『隣の家の少女』は加害者側に男がいますので、更に見ていて辛かったです。
再確認しないとレビューを書きにくいんですが、もう1度見ようとはなかなか思えないです。

隣の家の少女

「隣の家の少女」見ましたー。「アメリカンクライム」より暴力描写がキツイですね。その面では「アメリカン〜」よりも不快に感じました。でも比較すると怖さ的にも作品的にも「アメリカンクライム」のほうが上に思いました。

1番違うところは子供達ですかね。「隣り〜」は母親も子供達も完全悪なので、感じるのは怒りだけですが「アメリカン〜」の子供達は流れというかノリで虐待を行なっている(シルヴィアに好意を寄せている子でさえ)ので、集団心理による罪悪感の欠如、罪悪感の麻痺による暴行のエスカレートなど、人の危険性というか残酷さ愚かしさがリアルに表われていて怖いです。裁判でも皆口を揃えてなぜ虐待をしたか「わからない」と答えていますし。

ただ「アメリカン〜」で惜しむべきは虐待シーンが少々おとなし過ぎるところですね。見ていて辛いシーンではありますが、そこが強調される事によって人間の業がより浮き彫りになると思うので。

「隣り」を見た後、「アメリカン〜」のラストがとても良く思えてきました。ほんの一瞬の救い、本当はこうなって欲しかったという犠牲者に対する製作者の敬意だと思いたいです。(ただ捻りを加えたかっただけかもしれませんが)

「隣り〜」は終盤あまりにも腹立たしくなったので、全然違う話しになってもいいので、メグがランボー化し「悪魔のえじき(発情アニマル)」の如く一人一人残虐な手口で復讐して欲しいと思いました。

あ、ついつい長くなってしまいました。すみません^^;

>sasuperia2redさん

ご覧になられたんですね。
私が書いたのかな?と思うくらい、sasuperia2redさんのコメントには同意見です。
『アメリカン〜』の方は暴力描写が控えめなんですよね。まぁやってる事はめちゃくちゃだしエレン・ペイジも頑張ってはいましたけど。
社会派映画ってとこでしょうか。
あのラストですが、普通に死なれるより一瞬救われたのかな?と思わせておいての彼女の死は更に絶望感を生み、あまり好きになれない・・と言う意見も聞いた事があります。

確かにランボー化して欲しかったですね(笑)
あんな鬼畜達、裁判なんかでは裁けませんもんね!

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>ジソップさん

もう見てはいないでしょうけど、本当にごめんなさいね~!
このコメント、4年たった現在気がつきました(T_T)
サイトに表示されない秘密のコメントがあったとはつゆ知らず、本当に申し訳ない限りです。

さてさて、刑を免れた子供達のその後についてですが、私も存じ上げません。
どうググっても分かりかねます。守られているのでしょうね。
それは日本の少年法の問題も一緒で、守られている加害者以外の全員が疑問に思うところですね。

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